徐々に明らか最新の心理学が解き明かすストレスが役に立つ仕組み。
これまでの記事ではストレスを抱え込みやすい性格特徴、ストレスが体に悪影響をもたらす時のストレス反応についてご紹介してきました。
そこで、本記事ではストレスが、パフォーマンスや人とのつながりを強化するとき、言い換えると、「ストレスが役に立つ」時のストレス反応についてご紹介していきます。
これまでの研究ではストレス反応といえば、一般的に逃走―闘争反応のことを意味してきました。
しかし、最近の研究ではストレス反応は逃走―闘争反応だけではないことが明らかになってきています。
- ストレス反応の種類
- 逃走―闘争反応
- チャレンジ反応
- チャレンジ反応と逃走―闘争反応における違い
- 思いやり・絆反応
- ストレスに関する知識を実生活に応用するには
- まとめ
- ストレス場面から回復までに流れ
- ストレスを力に変える方法
- 参考文献
ストレス反応の種類
・逃走―闘争反応
・チャレンジ反応
・思いやり・絆反応
今回はこの3種類、特にチャレンジ反応と思いやり・絆反応についてご紹介していきます。
逃走―闘争反応
逃走―闘争反応はこれまでの記事で既に解説したように、身の危険を感じた時のストレス反応でしたね。
例として、シマウマがライオンに遭遇した場面を挙げました。詳しくは以前の記事を参照してみてください。
こちら⇩
ストレスを語る上で抑えておきたいストレスの基本事項 - 自分で学ぶ心理学
チャレンジ反応
チャレンジ反応とはストレスは感じているが、そんなに危険ではないと認識するときに起こるストレス反応の一種と言われています。
言い換えると、
逃走―逃走反応と似た状況だけど、恐怖を感じていないときに起こるストレス反応の一種です。
チャレンジ反応が起こると、人は
・自信が沸き起こり
・集中力が上がり
・より高い成果をあげる
と言われています。
程よいプレッシャーを感じているときにチャレンジ反応は起こりやすいのですね。
これは闘争―逃走反応における、良い面を引き出しているため、集中力が高まったりするのですね。
おそらく、前回の記事で紹介したハーディネス(強いストレス下でも頑張れる性格)の傾向の方は
このような反応が多いのかもしれません。
ハーディネスについてはこちら⇩
ストレスに強い性格、抱え込みやすい性格【完璧主義測定テスト付き】 - 自分で学ぶ心理学
話を戻します。
では、チャレンジ反応と逃走―闘争反応では体の中では何が違うのでしょうか?
チャレンジ反応と逃走―闘争反応における違い
チャレンジ反応では分泌されるホルモンの割合が異なると言われています。
前回から何回か登場しているコルチゾールというホルモンは今回も分泌されます。
このコルチゾールが長期的にたくさん分泌され続けると、免疫機能が低下し、病気を引き起こしてしまう
可能性が高まりまると言われています。
チャレンジ反応で重要なホルモンはコルチゾールとDHEAというホルモンの割合と言われています。
その理由は
コルチゾール/DHEA = 成長指数
と言われており、この成長指数が高いほど、人は新しいことを学習すると言われています。
(本記事の回復期にて詳しく説明します)
チャレンジ反応が生じているときはコルチゾールとともにDHEAもたくさん分泌されるため、
新しい知識や技術、経験を自分のものとして自分の財産となるようです。
思いやり・絆反応
思いやり・絆反応は社会的ストレスを感じた時に起こり得るストレス反応の一種といわれています。
社会的ストレスとは家族、友人、職場など幅広い対人関係を含む、日常生活でよく生じるストレスです。
この社会的ストレスを感じた時に分泌されるホルモンはオキシトシンというホルモンで、別名愛情ホルモンともいわれます。
なぜ愛情ホルモンと言われるのかというと、オキシトシンは
抱きしめた時や授乳時等の人と人の接触時に多く分泌されるホルモンであるためです。
では、このオキシトシンが分泌される思いやり・絆反応ではどんなことが生じるのか。
思いやり・絆反応が起こると、
・勇気が出る
・人の世話をしたいという気持ちの増加
・社会的関係の強化を図る
・不安の軽減
等言われています。
具体的には思いやり・絆反応によってオキシトシン分泌されると
自分にとって大切な集団を守りたいという気持ちが高まり、勇気ある決断や行動ができるようになります。
恐怖心を鈍らし、それによって逃げ出したり、体が硬直することを防いでくれます。
自営業の方が、自分の会社の社員を守りたいという気持ちで人一倍一生懸命に働いたり、
家族や恋人、大切な友人を守りたいとい気持ちが高まり、勇気ある行動ができるようになることを
イメージするのがわかりやすいかもしれません。
また、社会的関係の強化とは、人と繋がりたいと思う気持ちが高まることを意味します。
社会的関係の強化にはメールをする、飲みに行く等を含みます。
(*オキシトシンについては別記事でさらに詳しく書く予定です。)
ここまで、逃走―闘争反応、チャレンジ反応、思いやり・絆反応の3種類のストレス反応についてご紹介してきました。
ここからは、ストレス反応が終わった後はどうなるのかについて 解説していきます。
回復期
一連のストレス反応が終わると、人は安定状態に戻るために回復期に入ります。
この時期は体の回復と同時に学習も行われます。
回復期は先ほどチャレンジ反応で登場したDHEAというホルモンと、他の神経が成長をするのを促す物質が分泌されます。
既にご存知の方が多いかもしれませんが、脳は絶えず変化することができ、何歳になっても学習し続けることができます。
自分が経験したことは全て脳内に情報として送られ、次回同じような場面に遭遇した時どのように行動すればよいのかを自動的に学習します。
具体的には、
脳の成長を促すホルモンが分泌され、ストレス反応からの回復し、そのストレッサーに対する免疫が作られます。そして次回のストレス場面に備えます。
この一連の流れが学習です。
では、どうやったらDHEA、オキシトシン、などを分泌させることができるのか。
これが一番実生活で重要なことですね。
ストレスに関する知識を実生活に応用するには
ここまでのストレスに関する知識をフル動員させることで、実生活に応用することができるようになると言われています。
応用方法
ストレスを感じる状況を自分の努力で変えられる場合
- ストレスを感じた時に、ストレスには良い面もあることを思い出す(次回の記事で具体的研究方法など事例をご紹介しますが、簡単な事例はこちら⇩)
ストレスが役に立つこともあるとわかった8つの研究例 - 自分で学ぶ心理学
↓
- チャレンジ反応・思いやり・絆反応を思い出す「ストレスは集中力・勇気・行動力を高め自分を助ける効果がある」
↓
- 状況を変えるために行動する
ストレスを感じる状況を自分で変えられない場合
- その活動を行うことによる「意義や人とのつながり」を意識する
↓
- 周りの人を手助けしようと決断する
↓
- 思いやり・絆反応が生じやすくなる
このようにスタンフォード大学の心理学者は紹介してくれています。
どちらの状況においても、「ストレスは役に立つ面もある」とあると認識し、
やみくもにストレスを避けないようにすることが重要なんですね。
まとめ
ストレス反応の種類
逃走―闘争反応(前回の記事参照)
チャレンジ反応
思いやり・絆反応
ストレス場面から回復までに流れ
ストレス場面に直面
↓
なんらかのストレス反応
↓
回復期で学習
ストレスを力に変える方法
ストレスを感じた時、自分にとって大切なものが脅かされていると認識する。
それは何かを再認識する良い機会ととらえる。
↓
ストレスは役に立つことを思い出す
↓
状況を変えるため、または、自分にとって大切なものを守るために行動する
イメージ図⇩
*「自分にとって大切なものを脅かすもの」とは人によって様々です。
自由・名誉・時間・家族・友達・趣味の時間など
自分にとって何が重要であるのかを認識することが、ストレスを味方にする
ために、一番重要なことであると、心理学者、ケリーマクゴニカルさんはおっしゃっています。
よかったら、「ストレスと友達になる方法」TED で検索してみて下さい。
短く今回の記事の内容をプレゼンしている動画です。
参考文献
和書
Mcewen, B & Lasley, E. N. (2004). The end of stress as we know. (桜内 篤子(訳).(2004)ストレスに負けない脳 心と体を癒すしくみを探る 早川書房)